一番のオカルトは五男の方

お題:銅像/くろひつじおそ松カラ松チョロ松一松十四松トド松小説

 夕飯を終えた居間で、六つ子は揃ってテレビを観ていた。
 何気なく付けたチャンネルでやっていたのは、真夏の定番とも言える心霊番組。
 ちょうどよくある学校の怪談をベースにした怖い話の再現ドラマをやっていた。

「そういや、そんな怪談あったねぇ〜」
「あったねぇ。なんだけ?トイレの花子さんとか?」
「理科室の人体模型に、誰もいない音楽室から聞こえるピアノの音……」
「声が聞こえる掃除用具入れってのもあったな」
「段数が変わる階段とー、あとなんだっけ?」
「ホントやめて。怪談話禁止!!テレビも変えて!!」

 恐がりのトド松を除いた五人は、懐かしむように通っていた高校の七不思議を語りだす。
 叫ぶような末弟の訴えを無視し、兄弟はテレビなどそっちのけで昔話に夢中になった。

「校長先生の肖像画の目が光るとかもなかった?」
「ひい、ふう……これで六つか。あと一つなんだっけ?」
「……夜中、校庭を走る二宮金次郎像」
「あー!それそれ!あったねぇ」

 七不思議を全て思い出し、満足するかと思いきや、おそ松が妙なことを言い始める。

「なぁ、これから学校行ってみない?」
「はぁ?なんで?!」
「え、せっかくだから肝試しに……」
「ばっかじゃないの?!不審者だって通報されたいか?!寧ろ今してやろうか?!」
「学校はいんなくても、走る金次郎像は見れるかもじゃん?」

 トド松の狂乱ぶりを眺めていると、十四松が一松の肩をぽんぽんと叩いた。

「ねぇ、一松兄さん」
「なに?十四松」
「あの、二宮金次郎像ってさ、なんで歩きながら本読んでるの?」
「あー。あれは、貧しくて学校に行けない金次郎は、家の手伝いをしながら勉強してたんだって。薪しょってたでしょ?」
「そうでしたねぇ」
「それくらいの意欲で勉強しろってことらしいけど、なんか今じゃ、歩きながら本読むなんてよくない!歩きスマホを助長する!とかクレームついてるらしいけどね。ふひ」
「そっかぁ、勉強してたのかぁ。それでかぁ……」

 十四松が腕を組み、なにやらうんうん、と頷いていた。
 それで、とはどういうことだろう?なんとなく引っかかって、一松は聞いてみた。

「……なにが”それで”なの?」
「いやー、こないだ高校の前を通ったら、金次郎さんが校庭をぐーるぐーるしてたから、競争しやしょうぜ!って誘ったんだけど、ノってくれなくって……」

「「「えっ?」」」

 十四松の言葉に、他の兄弟が一斉に十四松の方を見た。

「勉強してるなら、競争するのは無理だねぇ。邪魔出来ないし」

 うんうん、と一人頷く十四松。
 それを見て、トド松はおそ松に意地悪く言葉をぶつける。

「……どうするの?おそ松兄さん。十四松兄さんのお墨付きみたいだけど」
「じゃあ行かない」
「はぁ?!なにそれ?!」

 おそ松は立ち上がろうと中腰だったのを、そのまますとんと元の席へ座り直した。

「肝試しってのはな、何も起こらないって分かっててやるんだよ。確実に起きるとこいったら死んじゃうって」
「ま、肝試しなんか行かなくても、わが家には一番のオカルトがいるからねぇ」

 チョロ松の言葉に、十四松以外の兄弟はうんうん、と頷いた。

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