急がば回れ

お題:オリジナル/くろひつじ一松十四松トド松小説

 ――あー、遅くなっちゃったな。

 人数合わせの合コンをなんとか二次会で抜け出し、ギリギリ終電に飛び乗れた。時計の針はすでに深夜1時を回っていて、怖いから誰かに駅まで迎えにきて欲しい気持ちもあったけれど、こんな時間だしなぁと気が引けて、とりあえず出来るだけ近道で帰ろうといつもとちょっと違う道に入った。
 住宅街の中を突き抜けるようにまっすぐ進む。似たような景色ばかりの辻をいくつか通り過ぎ、もういくつか過ぎたら玄関の灯りが目に入るはずだった。
 しかし、

 ーーあれ?

 見えて来たのは、深夜でも煌々と明るい電気が眩しいコンビニ。
 おかしい。
 コンビニはいくつか通り過ぎる辻を曲がらないと辿り着かない場所にあるはずだ。うっかり曲がってしまったのだろうか?
 コンビニを看板を見つめて何故なのか考えていると、そのコンビニから見知った顔が2つ出てきた。

「あれ?トド松じゃん」
「あートッティ!おかえりー!」

 四男の一松と五男の十四松。同じ六つ子の下の兄達だった。
「い、一松兄さん、十四松兄さん…」
「……どしたの?」

 オロオロしている様子を不思議に思った二人に訳を聞かれて、正直に今ここにたどり着いた経緯を話す。

「どうせ、スマホ見ながら歩いてたんでしょ」
「う、うん……」

 良くないと思いつつ、あまりに怖いのでスマホを見ながら歩いていた。
 それもあって気のせいだと思いたい。まっすぐ進むことを意識してはいたものの、何かしらの拍子に曲がったのかもしれない。

「……そっかぁ、じゃあ、別の道で帰ろっか!」
「え、でも」
「ねっ!」

 十四松はにこにこと笑った顔ではあったが、有無を言わさずトド松が来た道とは違う道を歩き出した。一松も特に何も言わず、十四松の後について歩く。
 でも、二人だって自分が来た道を通った方が家に近いことを知っているはずなのだ。

「え、なんで!だって、こっちから行った方が早いし……!」

 来た道を指差して言う。兄二人が向かう道ははっきり言って遠回りだ。しかし、二人は顔を見合わせて、

「だから、だよ」
「早く帰りたいならこっちから行こう!」
「なんで?!」
「だって、そっちには面倒なのがいるはずだから」
「……え?」

 ゴオッと背後から強い風が吹いてきた。生温く湿度を帯び、どこか嫌な匂いの混ざるつむじ風。

「……だから、ね?」
「う、うん……」

 十四松の笑顔に、トド松はふらふらと二人に歩み寄った。
 すると、

 ……チッ。

 背後から、憎々しさのこもる舌打ちがした。
 吃驚して振り返るが、その先は外灯すらない暗い道が続くだけ。

「トド松、急がば回れ、だよ」

 十四松がにっこり笑ってそう言った。 

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