小さな公園の話
「へぇ、こんなところに公園なんかあったんだ」
早朝のランニング。
いつもと違うルートを走ってみたら、大きな団地に迷い込んでしまった。
その団地の建物と建物の間に、小さくぽつんと公園があった。
トイレとすべり台、そして鉄棒とブランコだけがある、小さな公園。
ちょっとトイレ休憩がてら、その公園に入ってみる。
少し懐かしい匂いを感じるそこは、その場所だけ時間が止まっているような、不思議な感覚がした。
キィ……キィ……
風のせいか、ブランコが一つだけ揺れていた。
ちょっと気味が悪く感じたので、ブランコを止めてからトイレに向かった。
人気のない公園のようだが、トイレは清潔に掃除もされていた。
公衆トイレだとよくトイレの紙だけなかったりするのだが、ここはきちんと補充用のものまで手洗い場の近くに置いてあった。
意外と穴場なのかもしれない。
そう思って個室に入って用を足していると、突然視線を感じた。
いやいやいやいや、ここトイレだよ?個室だよ?
さすがに怖くて辺りを見ることは出来なかった。
何かと目が合ったらさ、怖いじゃん。
そそくさと用を足すと、手を洗ってトイレを出たら、不思議な視線はなくなった。
やっぱり、なんかあるのかな、公園。
はぁ、とため息をつく。すると、
キィ……キィ……
ブランコがまた揺れていた。
1つだけ。
ちなみにブランコは、2つあった。
* *
「怖くて猛ダッシュしたよ……怖すぎ」
「へー。この辺にそんな場所あったんだ」
大急ぎで帰宅したら、ちょうどチョロ松兄さんが起きてきたところで、ボクは縋るように起きた出来事を話した。
まだあまり覚醒してないらしいチョロ松兄さんは、話半分という感じだったけど。まぁ話せたからいいか。
そう思っていると、チョロ松兄さんがパソコンでなにやら検索し始めた。
「あ、あった」
「え?何、そのサイト……」
「事故物件検索サイト」
「なにそれ!?」
そのサイトは、過去に殺人や自殺などが起きた建物、いわゆる事故物件を調べることが出来るらしい。
「トド松が行った公園って、ここじゃない?」
チョロ松兄さんの指差す地図の場所を見て、あ、と気付く。
この辺りの近所で、大きな団地の建物と建物の間にある、ちいさな公園。
その公園のほど近い団地に、炎のような赤いマークがついている。事故物件の場合マークがつくらしい。
「一家心中か……大方、その時の子どもがそのブランコで遊んでたんじゃない?」
うーん、とチョロ松兄さんが背伸びをして、顔洗ってくるねーと席を立った。
幽霊も怖いけど、淡々としたチョロ松兄さんのほうがよっぽど怖いや。
そう思いながら、事故物件のサイトを改めて見ると、その団地にはマークが重なるようにしてもう一つあった。
この団地、そんなにあんの……なんて、興味本位で見てしまった。
そしてすぐ、見なきゃよかった、と後悔した。
『近くの公園のトイレで首つり自殺。散歩中の男性が発見』
トイレの個室で感じた視線を思い出して、ボクはぶるりと身震いした。