公衆電話からの着信

お題:公衆電話/くろひつじおそ松カラ松チョロ松一松十四松トド松小説

携帯電話が普及した現在では、公衆電話というものをあまり見かけなくなった。
何かあればすぐ掛けられるように、と街のあちこちあったものだが、今では公園の近くや駅の近く、人通りのある場所に1つか2つある程度だ。
今の若い人の中には「119や110はお金を入れなくても掛けられる」ということを知らないと言われるほど、現代からはだいぶ置き去られている代物だ。

そんな公衆電話にも、怪談というものはある。
それは・・・

「もうやめて。これ以上無理!!」
「えー。嫌ならもう寝ろよー」
「一人で寝れないってば!!」

夕食も終えた時間に始まった心霊番組を、六つ子は居間でそろって観ていた。約一名は猛反対をしていたが、怖い絵面を見たあとに、2階の大きな布団で一人きりで寝る方が恐ろしい。

テレビでは、公衆電話にまつわる都市伝説を解説していた。
夜中、公衆電話が鳴っているのをうっかり取ってしまい、その声を聞くとこの世ではないどこかに連れ去られてしまうというのだ。

「公衆電話が鳴るってだけで怖いよなー」
「確かに。でも一応、公衆電話ごとに電話番号が割り振ってあって、デタラメに掛けたら繋がった、みたいな話は聞いたことあるよ」
「へー」

そういえば、近所の公園の近くにも公衆電話があったよね、という話から、実際に電話が掛かってくるか行ってみようか?なんて話に発展してしまう。

「ばっかじゃないの?!」
「えー、なんだよノリ悪いなぁ」
「今から行くの?!」
「僕は明日にゃーちゃんのライブあるから行かない」
「おれは面倒だから行かない」
「オレは構わないぞ?」

結局、おそ松の提案にのったのは十四松とカラ松の二人きり。
パジャマだったのを揃いのパーカーに着替え、いってきま〜すと意気揚々と出掛けていった。

「はぁ、バカなんじゃないかな」
「ホントにねぇ」
「あほらし」

残った三人は、トド松に意向で番組を変え、バラエティ番組なんかを観ながら少し広くなった居間でのんびりと過ごす。
そうして三十分は経っただろうか、突然トド松のスマホが軽快なメロディで鳴り出した。

「うわっ。こんな時間に誰?」

しかめ面で宛先表示を見ると『公衆電話』の文字。
おおかた、公衆電話の都市伝説を検証しにいった3人からだろう。
はぁ、とため息をついて、トド松は少々荒っぽい声で電話に出る。

「もしもし?」
「……………………」
「ん?どなたですか?」
「……………………」
「ちょっとー?もう何??」

電話に出たものの、相手は一向に喋る気配はない。
訝しんだ顔でスマホを見る。
宛先はやはり『公衆電話』だ。

「どうしたの?」
「えー『公衆電話』から着信。たぶん、おそ松兄さん達だと思うんだけど……」
「けど?」
「無言なんだよ」

むっとふくれ面のトド松からスマホを受け取り、チョロ松が応じてみる。

「もしもし?」
「……………………」
「もしかして、おそ松兄さん?」
「……………………」
「くだらないことやってないで帰って来なよ」
「……………………」
「怖がらせるつもりなんだろうけど、ぜんっぜん怖くないからね?」
「……………………」
「喋んないなら切るよ?」
「……………………」
「じゃあ切るからね?」
「……………………」

しばらく待つも、無言が続くので、仕方なくチョロ松は電話を切った。

「まったく、くだらないこと考えるよね」
「ホントホント」

そんな話をしながらテレビを眺め、出掛けた三人が帰ってくるのを待った。
しかし、日付がそろそろ変わろうという時間になっても、一向に帰ってこない。

「なにしてんだろ?」
「公園の近くって、ちび太のおでんなかったっけ?」
「あぁあったね」
「おそ松兄さんいるし、おおかた飲んでるんじゃないの」
「あり得る……」
「じゃあ僕、明日早いからもう寝るね」
「おれも」
「えっ!じ、じゃあボクも!」

待つのもアホらしい、と三人で二階へ行こうとしたところで、たっだいま〜!と陽気な声が玄関から聞こえてきた。

「おかえりー」
「うわっ酒くさっ」
「いやーおでんの提灯が見えちゃったからさー」

ほろ酔いのおそ松とカラ松と十四松が、赤い顔で玄関に座り込む。
パジャマ姿の三人は、ああやっぱりね、と顔を見合わせた。

「じゃあやっぱり、ボクの携帯に公衆電話から電話してきたの、おそ松兄さんでしょ?」
「んぇ?」
「ホントやめてよね、無言のままとかさ。不気味ったらありゃしない」

ぷりぷり怒るトド松に、顔の赤い三人は顔を見合わせた。そして、

「トド松、なんの話だ?」

カラ松がそう言った。
なんでも三人で意気揚々と公園まで出掛けたのだが、記憶の中にあった公衆電話はすでに撤去されて無くなっていたというのだ。
もちろん、道中、公衆電話からトド松の携帯に掛けてやろうという話もしたのだが、そもそもの公衆電話が無いのでは、都市伝説の検証はおろか、いたずらに電話することもできない。
すっかり興が削がれ、帰ろうとしたところでおでんの赤提灯をみつけてしまい、吸い込まれるように屋台の方へと行ったのだという。

「え、じゃあボクの携帯に掛けてきたのって……?」

きょとんとした顔の三人に、ほら、と着信履歴を見せてやる。
確かに、自分たちがおでんと酒を飲んでいる頃合いに『公衆電話』からの着信があった。

玄関先で6人がこれはいったい…と首を傾げていると、ガンッガンッと玄関の戸を叩く音がした。
一斉にそちらをみやると、軒先の外灯に照らされた黒っぽい影が映っている。
そして、しゃがれたような低い声が聞こえてきた。

「タ ダ イ マ。 カ エッ テ キ タ ヨ」

↑ ページトップへ