アタリガケ

お題:オリジナル/にれにれトド松小説

じゃあ、ボクの番だね。はい、みんな拍手〜〜!
えっ?怖がりなトッティに怖い話ができるのかって?嫌だな〜〜カラ松兄さん、ボクだってみんなに怖がらせてもらってばかりじゃ割に合わないんだからさ。
ここは日頃の仕返し……じゃなかった、お返しさせてもらうよ☆
 

はじまりは先々週の金曜日にあつしくんとあつしくんの友達と一緒に合コンに行ったときのこと。えっ?どうして俺たちを誘わなかったんだって?おそ松兄さん、また開催するとき考えるから今は黙って聞いてほしいな。
うん、それで合コンはどうだったかっていうともう最悪!あつしくんの連れてきたサブカル気取りの成金ボンボンな友達ってば、うまい具合に自分をアピールしながらボクのこと貶すんだよ!
自己紹介してるときに自分もその趣味持ってるんです体に自分の方へ話題をかっさらっていったり、人がサラダとりわけたら「なにもなし夫はこういうとこで点数かせがないとなー。」とか、酔っぱらった女の子と一緒になって弄ってきたりさ!
おかげで結果は散々!ボッチでお酒飲むことになるし、誰もLINE交換してくれないし、目も合わせてくれない。それどころか二次会まで暗に出席をお断りされちゃってさ!もう、最悪だよ!ざまぁwwwとか一松兄さん、ここは慰めてってば!

そんなんで限りなく暗黒に近いブルー気持ちで、いつかのチョロ松兄さんみたいにスゲーガラ悪く行儀悪く悪態つきつき千鳥足で帰ってたら変なお店を見つけたんだ。
『黒魔術道具の館』ってね。普段ならスルーどころか関わり合いたくないから避けて通るくらいなんだけど、お酒の力って怖いよね〜〜?十四松兄さん。そう、気が大きくなってたトッティはそのお店入っちゃったんだよ。
そしたら占い師みたいな格好をした一松兄さんがいてさ。なにやってんの?って聞いたら黒魔術師だって言うんだよ〜〜笑っちゃうよね。本当、闇松ここに極まれり?うん。ボクも一松兄さんは心配だよ、おそ松兄さん。

ひとまず兄弟のよしみで話だけでも聞いてあげようかなって、どんな道具があるのか聞いてみたんだ。
そしたら出てくる出てくる。藁人形に呪いの手袋、虫がたくさん詰まった瓶、でもどれもリスクがバリ高だったり、バレ率ヤバいし、時間が深夜限定とかでどれもこれも無理!却下、却下!
提案するものどれもこれも却下するボクに業を煮やした一松兄さんは、それならばととっておきを出してくれた。

そう!これがとっておきの黒魔術道具、アタリガケ!
うん?人型のくせに頭がからだと同じくらいで気持ち悪い?目玉が畑にぶら下がってるカラス避けみたいで、唇がタラコっていうデザインとバランスそうとうキテる?おそ松兄さん、チョロ松兄さん。ボクもはじめて見たとき思ったよ。気持っち悪!
せっかくだからそのときの一松兄さんみたいに使い方を説明してみるね。

使い方は簡単。まず呪いたいやつのお面……そう、スマホとかにある写真を引き延ばしたやつとかね。それにアタリガケとスコップを用意する。
んで、庭先でも空き地でも掘り返せる地面があるところに行く……そうそう、時間は藁人形と違って朝でも昼でもいつでもいいから。
そしたらお面を被って相手にしてやりたいことを人形にする。思いっきりこすぐってやるとか、恥ずかしい落書きしてやるとか…泥を塗りたくるのもいい。あとはデコピンに抓る、なんてね————なんかしょぼい?いいから黙って聞けゴラァッ!
気が済むまでやったら穴を掘って、アタリガケを埋める。このとき呪いたいやつの名前を名乗りながら『悔しかったらやりかえしてみろ』って何度もどつく。後はお家に帰っておしまい。
注意することはたったの2つ————儀式を行ってるとこを見られないこと、アタリガケを埋めるまではお面をとらないこと。ひひっ……ね、簡単でしょ?

どう?けっこう似てたかな、一松兄さん。あれれ?顔色悪いけど大丈夫?

手軽さと時間制限がないことがボクにとってはすごく魅力的でね。かなり心揺れうごいたんだけど、6体で1セットの7,500円とか言われてさ。
そう、こういうやつの相場がわからないから高いんだか安いんだかわからないじゃん?
だからめちゃくちゃ悩んでたら「今ならもう1セットつけて、お試し無料キャンペーンでタダにしてあげる……しかも効果がなかったら2セット分の料金を詫び金として支払ってやるよ」なんて言われてね。
チョロ松兄さんもそう思うでしょ?
本気!?弟のパチンコで儲けた金を遠慮なく毟りとってくベストオブ金の亡者!!守銭奴の鏡であり殿堂入り確実な松野家の四男ともある兄さんが!?なんなの!?天変地異でも起きる予定!?ってね。
あんまり言っちゃうと、拗ねて「そんなこと言うならあげない……」なんて引っ込められかねないからさ。うやうやしく「ありがたく頂戴いたします、一松様」って両手を掲げてもらっていったんだ。
もちろん、効果がなかったら遠慮なく詫び金もらうからね!って念を押してからね。
 

さっそく次の日の早朝、マラソンに行く前にうちの庭……そう、洗面所やお風呂がある側ね。そこの茂みで一発試してみたんだ!
そんなシコ松するみたいに言わなくていい?だって、あまりにも簡単だったからさ〜〜。
朝日を浴びて爽やかな風を受けながらムカつくやつになぞらえた人形に、罵詈雑言浴びせて好き勝手する…………言うことなくな〜〜い?
しかも当たったらスッキリしてサイコーだし、外れたら詫び金もらえてサイコーだし言うことなし!

とはいえやっぱり効果は半信半疑だったんだけど、これがバッチリだったんだ!
次の日の夕方にバドミントンサークルで知り合ったショップ店員の女の子とパンケーキ食べに行く途中で、あつしくんに会ったんだ。
ああ、サークルの話はまた後で話すからね。チョロ松兄さん。

あつしくんからはあの合コンのことを謝られてから、その後のサブカル崩れの成金ボンボンについてを教えてもらったんだ。
ボクを弄った要領で、フリーターやってる線は細いけど元ヤンの子を弄ったら、見事にブチキレられて顔がパンパンになるまで殴られたって。特に右側が目も開けられないくらいだったんだーなんて聞いてびっくりしたよ。
だって、ボクがアタリガケにしたことそのまんまだったから。
これを知ったときの気分は言葉では言い表せないよね。天使の●動筆記とかデス●ートとか手に入れたことと同じようなことでしょ?
すごいよね!気分は最高潮だった!

…………そうやって人間さ、楽を知ると落ちるのはすぐって言うじゃない?
まさにそのとおりでさ。タダで手に入れたからってのもあって、ボクはちょっとのことでもアタリガケをするようになった。

ボクの「なにもなし夫」ってあだ名の名付け親は、恥ずかしいあだ名で呼ばれるようになる。

囲碁サークルで対局で難癖つけてきたオヤジは、見事なつるっぱげになる。

ジムで機械器具をひとりじめして誰にも譲ろうとしないバカは、一気にデブになって膝を故障する。
 

本当、一松兄さんには感謝しかないね!今度高級ねこ缶おごってあげる!あれ?いつもならちょっと嬉しげな感じなのに、なにその怯えた感じ。気にしないで?……そう、ならいいけど。
とまあ、こんな感じでステキ黒魔術ライフを満喫していたある日、事件が起こる。
十四松兄さん、大正解!! そうだよ、昨日のチョロ松兄さんとの大ゲンカね。

発端はさらに遡ること数日前。ボクがキャビンアテンダントのおねーさま方と合コン組もうと家デンとスマホを駆使しているとき、奇しくもチョロ松兄さんガチ推しアイドル、にゃーちゃんのサマーフェスティバルスペシャルライブチケット発売日だったわけ。それをゲットするべく家デンに張り込もうとしてた矢先にボクに占領されちゃったわけ。
なだめすかしたり駄々こねたり土下座したりすごかったよね。でもボクはどかなかった。だってキャビンアテンダントのおねーさまとお近づきになれるかどうかの瀬戸際だったからね。結局チョロ松兄さんはチケットがとれずに終わった。

それを恐ろしいことにずーーーーっと根に持ってたんだよ、チョロ松兄さんってば。当たり前だって言われても、ボクはそう思わないからな〜〜。
そうやって仕返しするタイミングを待ちぶせしちゃうあたり本当、クソ童貞って感じだよね。
ようやくとりつけた女子大生とのバーベキューキャンプの約束を、ボクのふりして断りやがったんだ。俺ならトド松のふりして乗り込んでやるとか、冗談キツイよおそ松兄さん!
そういう流れであの大ゲンカ。我ながらすごかったと思うよ。
だってチョロ松兄さん、人のことドライモンスター呼ばわりするクセに自分も相当ひどいこと言うでしょ?
昨日のも随分ひどかったよね??ああ、今再戦するつもりはないから抑えてねチョロ松兄さん。
そう、一言一句覚えてるよ「所詮6人の出がらしでしかないお前に期待した僕が馬鹿だったね。ごめんね?トッティ」
 

完全にブチキレたボクは夜なのも構わず裏庭に向かうなり、チョロ松兄さんのお面を被ってアタリガケをボッコボコのギッタギタにした。
本当にあのときはこの世から消えてなくなれって思ったからね。
アタリガケはすごいことになっちゃった。手足は千切れて目玉はとれ、唇は引き千切られてぶら下がり頭からは中の綿が飛び出すくらいに————
さあ埋めて呪をかけてやろうとしたそのとき、一松兄さんの可愛がってる猫が現れたんだ。たぶんチョロ松兄さんのお面に虫でも留まっていたんだろうね。戯れつき飛びかかってきた拍子に、お面が落っこちちゃってね。
ヤバって思ったよ。2つだけの約束の1つを破っちゃったんだからさ。
慌てて顔を腕で覆い隠しながら、アタリガケを埋めたよ。六つ子だからノーカンだといいなって都合のいいこと思いながら。
家に入るときに吹いてきた風がなんだか生温かったから気味が悪かったな…
 

そして今朝。ボクがマラソンしようと玄関を開けたら、裏庭から玄関の扉まで泥の塊が続いているのを見つけてね。
すぐに裏庭に行ったら、モグラの塚みたいに埋めた場所が隆起してて中を覗いたら————ないんだよ。昨日埋めたはずのアタリガケが。
マラソンどころじゃないよね。今までのから推測するに、呪をかけた次の日には効力発揮してるんだから。
見つけたところでどうすればいいかわからなかったけど、とにかく探すしかないからさ。
ちび太のとこからイヤミのとこ、トト子ちゃんの家にスタバァまで駆け巡ったけど一向に見つからない。もう焦る焦る。
売りつけてきた一松に聞けば?そうなんだよ、おそ松兄さん。そこでようやくボクも気づいてね。即座に家に戻ったよ。

運良くすぐに一松兄さんに遭遇することができたんだけど、ここで衝撃的事実が発覚!
そもそもアタリガケがなんのことだか知らないどころか、あの日は兄さんたち揃ってジ●ジョ●4部の音読会してたんだって?
最初ボクのこと怖がらせようって思って言ってるんだと思ったら、カラ松兄さんや十四松兄さんまでそうだって言うじゃない?もう、びっくりとかそういう時限じゃないよね。
じゃあ、あのときボクにアタリガケを売りつけてきた一松兄さんは誰だったの?とか、どうしてボクだったんだろうとか、これからボクはどうしたらいいの?って……背筋が凍るどころかなんかもう虚無って感覚だよね。恐怖で感覚遮断してるみたいな?

そうして愕然としてるうちにカラ松兄さんも一松兄さんも十四松兄さんも野球に行っちゃってさ、薄情だよね〜〜。人のこと言えないって?でもこんな緊急事態のときにボク一人っきりだよ?
とにかくどこかに遠くに逃げなきゃって振り返ると、居間のガラス戸に写るボクの背後には人の頭ほどあるカラス避けみたいな模様の球体が2つに抱き枕大のタラコ唇があってさ。
食い入るように見ているとそのうちタラコ唇がゆっくりと割れるように上下に開いていって、握り拳大の黄色い歯が見えてきて……
 

ま、こんなところでこれが6時間前に本当にあった怖い話。出来立てほやほやだね!
やだな〜〜みんな、どうしたの?そんな青ざめちゃってさ。
いつからそんな目になってたって?う〜〜ん……ちょっと前から、かな?
おそ松兄さん、顔ひきつってるよ〜〜。
チョロ松兄さん、その顔どんな感情?
一松兄さん、腰抜けちゃってるよ?ウケる〜〜。
十四松兄さん、泣くのは止めて?ボクも悲しくなっちゃうよ。
え?カラ松兄さん、お前はいったい誰なんだって?

 

ダ レ ダ ト オ モ ウ ?
 

ウ ン 、 ト ド マ ツ ダ ヨ !

 

【終】

↑ ページトップへ