One hideーandーseek

お題:一人かくれんぼ/ひな一松小説

あれ…だれ、君。もしかして、君も?…あぁ、手順がわからないんだ。じゃあ、教えてあげるね?
まず、ぬいぐるみを用意する。僕はクソ松が作ってくれたぬいぐるみ。
次に、そのぬいぐるみの綿を全部取り除く。全部だよ?で、その代わりに米を詰
める。その時に自分の爪も入れてね?まぁ、僕は肉、血、髪の毛。全部入れる。
ふひひっ
これを赤い糸で縫う。中身が出てこないようにね。最後に名前をつける。
…僕はもちろん、
「十四松。」

────ひとりかくれんぼ。

…ピピピっ
アラームの音で目が覚める。良かった、ちゃんと起きれた。
辺りを見回すと3人の兄と1人の弟が気持ちよさそうにすやすや眠っている。
…右端はぽっかり空いてる。
「…十四松。」
十四松は、もういない。あっちに行っちゃった。
その喪失感がまだ残ってて、気持ち悪い。そこで、何気にネットを開いて見つけ
たのが、ひとりかくれんぼ。
どうやら、一つの降霊術らしい。ついこの前試してみると、ほんとに会えた。
目の前には見慣れた袖の長い黄色いパーカーを間にまとった、僕の弟がそこにはいた。
「一松、兄さん…?」
僕は、クソ松が作ってくれた、ザラザラ音のする十四松そっくりの人形を抱えて風呂場に向かった。

スマホで調べた(もちろんトド松の)、ひとりかくれんぼのやり方をプリントした紙を取り出す。
(間違ったらやばいらしいからね…)
時計の針は午前3時をさしていた。
——まず、ぬいぐるみに向かって「最初の鬼は〇〇(自分の名前)だから」と3回言いましょう。
「最初の鬼は一松兄さんだから。」
——風呂場の、水を張った浴槽にぬいぐるみを沈めましょう。
予め貯めておいた浴槽に十四松を沈める。ぶくぶくと小さな泡が浮き上がった。
——部屋に戻り、家中のあかり、照明をすべて消し、テレビだけつけましょう。
この時テレビは砂嵐の画面にして下さい。
しんとした家の中を隅々まで巡回し、いつの間にかテレビの前に来ていた。チャンネルをぽちっと押すと、通販のCMが流れる中で僕はすっと砂嵐の画面に切り替えた。
——目を瞑って、10秒数えましょう。
「一、二、三…」
——包丁(カッター)を持ち、うろうろしながら風呂場へ向かいましょう。
特にうろうろする理由もなかったので(十四松に早く会いたいので)、僕は風呂場へ直進する。
——ぬいぐるみのところまで来たら「〇〇(人形の名前)見つけた」と言って、刺しましょう。
「十四松、みーっけ。」
僕はもう穴の開きまくった十四松の腹に、カッターを近づける。
ぶすり。
——「次は〇〇(人形の名前)が鬼」と言ってその場所にぬいぐるみを置き、すぐ逃げて隠れましょう。注意…
「次は、十四松が鬼だから!」
僕はペットボトルに入れた塩水を手に、走り出した。
その時、みんなが寝てる部屋でごそっとした音が聞こえた気がした。

僕はすぐさま押し入れに隠れた。あとは十四松が来てくれるのをただ待つだけ。
もう僕の中には恐怖感なんて存在しなかった。僕を支配してるのはそう、十四松に会えるというワクワク感。
今日は来てくれるかな。何の話しよっかな。あっ、そうだ。前に見せた猫がついに出産したんだ。あとは…
そんなことを考えていると、人の気配を感じた。
…来た。
ぞくり、という感覚が背中をつたる。
「一松兄さん、みーっけ!」
「…見つかっちゃった。」
目をやると、そこにはいつものパーカー、短パン、そして黄色いスリッパを履いたにっこり笑顔の十四松。
「久しぶり。」

降霊術に成功した僕は、それから十四松とたわいもない話をしていた。それが僕には楽しくて楽しくて、しょうがなかった。
「兄さん、今日は何して遊びまっか??」
「せやなー。かくれんぼでもしまっかー。」
「えー、またでっかー!」
「思いつかへんのやー。」
「じゃあ最初の鬼は一松兄さんやでー。隠れるから目閉じなはれー!」
「わかっとるがなー。」
目を瞑って数を数えてると、ふっと人の気配が消えたのがわかった。
かくれんぼ、スタート。

十四松を探していると、砂嵐のテレビのある居間にたどり着いた。
…あれ?
砂嵐の音がおかしい。
普通ザーっていう音のはずなのに、ザッ、ザザっーって途切れ途切れになっているのがわかった。
これ、やばいんじゃ…
心臓の音がバクバクなってる。体も思ったように動かせない。その時、テレビの画面が大きく歪んだ。
ぐにゃりぐにゃり。
大きな黒い渦が出てきて、中から出てきたそれは。
「十四松…?」
さっきまで話していたはずの弟の姿。でも、さっきと服装が違うし何より、足が
なかった。そう、それはまるで
十四松が事故に遭ったときの十四松のそっくりだった。
十四松が死んだ時のことがフラッシュバックする。そう、飛び出した男の子を助けるために身代わりになってトラックに跳ねられて、足をもぎ取られて。口元まであげた黄色いつなぎが真っ赤に染まって。
「う、ぅあ…。」
気持ち悪い。思い出したくない。記憶を消してしまいたい。
頭を抱えると、それは僕に触れた。
「一松、兄さん…」
見上げると、顔を血で染めた十四松が、悲しそうに笑っていた。
その時、僕の耳に衝撃が走った。
「いっ…!?」
キーンキーンと強い耳鳴りが僕を襲う。
思わず耳を塞いでいると、目の前にいる十四松が口をぱくぱく動かし始めた。
「一松兄さん…これ…上…ひと…かく…ぼを…るのは…めて……兄さんが危…いんだ……兄さんを…すけて。」
かすかに聞こえた十四松の声。だんだんひどくなる耳鳴り。苦痛で苦痛で仕方ない。
もう、どっかに行ってくれ!!!!
そう強く思った瞬間、ふっと耳鳴りが消えるのがわかった。手を離すと手には少しの血がついていた。
「あっ十四松っ…!」
その姿を探すと、それは少しずつ泡になっていた。
「十四松っ…行かないで!僕を置いていかないで…、」
「一松兄さん…ほんとにごめんなさい。でもずっと向こうで待ってるから。見守ってるから…」
「いやだ!このまま僕も…!」
「ダメっすよ一松兄さん。皆が悲しんじゃう。」
ぱっと見上げると十四松の目からはたくさんの雫が落ちかけていた。
でも、十四松はそれを堪えて必死に笑おうとしていた。
それにはっと気付かされる。
「…うん。十四松が見ててくれるならもうちょっとだけ、頑張ろうかな…。ひとりかくれんぼも、もうやめる。」
十四松はにぱあっといつもの笑顔に戻った。
「一松兄さん、ありがとう。」
「もう、時間っすね…」
もう体は消えて顔だけになってしまった十四松。
「じゃあ、また」
「あい!また、」
「会えマッスル!!!」
そして、泡になって、消えた。

(そういや、さっきまでいた十四松は誰だったんだ…?)

「あれ、カラ松。すっごい隈じゃん。どしたの。」
「あぁ、最近寝不足でな。だが、ノープロブレムだ。」
「ふーん…。」

——注意。家族がいる家では絶対にしないで下さい。家族に影響が出る恐れがあります。

↑ ページトップへ